ふぃーあ・てぃーあ

今日も大地を空を今を駆ろう ボクらがボクらであるために

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ゆーでぃあらいと

岩窟の入り口の一歩前。
そこに立った途端に、鼻を突く軽い臭気がする。
毒物や有害気体などについての専門知識もないから、何が原因かなんて分かりはしない。
だが、事前に聞いておいた情報によると、
たまに長時間滞在すると気分が悪くなるものもいるらしいが、さして毒性が強いものでもないという。
内部も迷路状になっていたりはせず、
比較的単純な構造をしているから、余程でなければ迷わないだろう、とのこと。
ただしそこそこ強めの魔物がいるから気をつけて――。
いくつか候補地はあったのだが、なるべく空気の汚染のないところを選んだ。
誰かについて専門的に式を学んだわけではないので、
大気中の毒素の分解除去などを行なう、広範に効果を及ぼす補助系治癒式は使えない。
そのおかげで、毒素とは違う意味で危険の少ない、別の候補地は除外せざるを得なかった。
“あそこ”の誰かについてきてもらえばそのような問題は一瞬で解決はしたのだが。
「あら、彼女への贈り物をするのに私たちが手伝うなんて、野暮、というものでしょう?」
あまり期待はせずに、その誰かのうち一人に聞いてみると、一蹴された。補助もダメらしい。
そもそも、彼女以外がついてきた瞬間、今回の探索の難易度が一気に下がってしまうし、
また、要請された彼女がついてきても、難易度が変わることにそう変わりはない。
若いうちの苦労は買ってでもせよ、など、こういうところで使える慣用句はここぞとばかりに使ってくる。
どこか、楽しんでいる風にも見受けられた。
――あぁ、そういえばこの人もあれは知ってるんだっけ。


もう数ヶ月も前になった、婚約結婚騒ぎ。
誰にこの責任があるかといえば、さっきの彼女に追及することもできるけれど、結局何百年も前の話であって。
時効、と言うことも出来ないけれど、今更責任がどうとかいう気分にはなれなくて。
この世界がカフェとつながっていた、繋がったせいか、いつの間にやら自身の存在を知られていて、
一族存亡の危機を救うため、などと称していつの間にやら婚約相手にさせられて。
しかも悪乗りしてそれを勧めようとしてくる人もいて。誰とは言わないけれど。
結局は、婚約云々の話を持ち出した族長のところへ行って、解消させた。
彼女はきっと、一連のことを事細かに知ってるに違いない。そんな場所に、位置にいる。
一応この世界と、かの世界や他の世界を繋ぐ、繋ぐことのできる立場にいる人だから、
そのときのことでも世話になったりしたのだが、やっぱりそのときも楽しそうだった。
「もう、こんなこと年に1,2回あることじゃないですか?
 いちいちボクに限ってからかわなくてもいいじゃないですか」
そう文句をいうと、彼女は、そうでもないのよ、と言った。
「華々しい存在に見えるかもしれないけれど、私は、私たちはこの世界に存在し続けるべきじゃないもの。
 だから、裏方に徹しないと。私たちは、だから、ここに集ってる。
 私とラピスがいて、それから何百年かしてルウとシロナと、ウィゼルがこの位置に。
 もしかしたらそのうち、ミトラとアトラもここにいるのかもね。……なるべく、そうならないようにしたいけれど」
だから、こんなに間近に、面白いことを見ることがなくって、と続けた。
その言葉には、面白くないです、といつもどおり、返しておいた。
今回も、カフェを通ってこちらに来て聞いてみたら、同じような感じで弄られた。
「なるほどね、本命の彼女が出来たから、プレゼントを」
「ちょっと、何でそうなるんですか、別に本命だとか彼女だとか、そーいうのじゃなくて!」
くすくすと、彼女は笑った。
精神年齢は、過ごした年月は肉体年齢など遥かに超えているだろうに、本当に、おかしそうに。
「まぁ、貴方の気持ちだから、別にそれは構わないけれど。
 あぁ、ごめんなさい、笑ってしまって。本当に久しぶりなのよ。こういうのを見るのは。
 ……私が、生きていた時以来、かも知れないわね」
最後の言葉は小さく紡がれた。
聞き取れはしたけど、意味は良く分からなかった。
小さな言葉にたくさんの意味を込められるくらいに、この人は生きてきたんだろうな、とふと思ったりした。
その直後、追いやられた。
「さて、善は急げというし、あまり遅くならないうちにいってらっしゃい。
 宝石細工師は腕のいいのを知ってるから、そっちに頼んでおくわ。
 一日あれば十分なのはできるだろうから、ある程度時間はだいじょうぶ。
 まぁ、倒れたりはしないようにね、……したら彼女に報告してあげようかしら?」
その冗句には、しなくていいです、と言って、直後、彼女という言葉を否定して、そして。
さして複雑な道程でもなかったので、貰った地図を頼りにすれば、迷うこともなかった。
街道にいくらか魔物も出たが、そう梃子摺らされるものでもなく、入り口に着き。
せつなは、岩窟に一歩目を踏み出した。
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静寂

「……結局一日篭ってましたね、マスター」
「…………」
「でもぉ、だってまさか……」
「想像も、していなかった、……できるわけがないですから。
 昨日の今日ですし、ね」


足りない。
代わりになんてなれない。
誰も。
▼追記の開閉
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相対

勝ちがあれば負けがある。
引き分けがない勝負なんて、いくらでも。
勝つか負けるかの、二つに一つ。
でももしそれが――
存在を賭けるものだとしたら。
あたしは。
平然と。さも当然のように。
それが当たり前かのように。
相手が存在していたことの上に立つことができるのかな。
あたしは。
誰かを踏みつけてまで、生きてていいのかな。
▼追記の開閉
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